映画で学ぶ英会話.5
【映画タイトル】
プロヴァンスの贈り物 (原題A Good Year)
【あらすじ】
投資銀行で莫大な利益を上げるディーラーのマックスは、ほとんど思い出すこともなかった叔父ヘンリーの死の知らせを受けます。子供のころ、夏の間、フランスのプロヴァンスでブドウ園を経営する叔父のところで過ごすのが習慣でした。叔父は、女好きでしたが、自分の土地からあまり出ず、マックスにワイン造りから背広の仕立てに至るまで、様々な話を聞かせ、簡単な雑用を手伝わせました。マックスは、プールで泳いだり、本を読んだり、叔父とテニスをしたりして自由に過ごし、英国の問題を抱えた両親から片時、逃れることができたのです。叔父は、マックスを自分の後継者にしようと考えていたようでしたが、マックスは、成長するにつれてむしろ金融、投資の道に進み、叔父と会うことも、話すこともなくなっていました。叔父には遺言もなく、最も近い縁者であるマックスがブドウ園を引き継ぐことになったのです。彼は、それを、たまたま手に入った不動産ぐらいにしか考えず、フランスに行って手続きが終わったらすぐに売りに出すつもりでした。しかし、プロヴァンスで待ち受けていたのは、ブドウ園で叔父とともにブドウを育てていたデュフロ氏で、彼は、叔父の代弁者としてマックスがブドウ園を売ることに猛反対するのです。そして、地元のビストロを仕切る南仏美人のファニー・シャネルと出会ったりしながら、マックスは、叔父と暮らした夏を思い出してゆくのです。
【場 面】
Scene 1
ファニー・シャネルとマックスの初めてのデートで、マックスは、待ち合わせ場所に着くとすぐに、“Have I told you that you are a vision ?”「君は、輝くほど綺麗だって言わなかったっけ?」なんて言いますが、ファニーは、食事の席でまず警告するのです。
Fanny: There is something you should know about me, Max.
Max; Yes.
Fanny: I’m very , very choosy.
Max: I’m very, very honored.
Fanny: I’m also very, very suspicious, very, very irrational and I have very short temper. I’m also extremely jealous and slow to forgive. Just so you know.
訳
ファニー「私についてあなたに知っておいてほしいことがあるのよ、マックス」
マックス「どうぞ」
ファニー「私ってとても、とても好みがうるさいの」
マックス「それはとても光栄に思います」
ファニー「それに、私、とても、とても疑い深いし、とても、とても理不尽で、とっても気が短いの。まだあって、ひどく嫉妬深いし、なかなか許さないわ。念のため知っておいてね」
Scene 2
一夜をマックスと過ごした後でファニーは、マックスが寝ているうちに去ろうとしますが物音でマックスが目を覚まします。ファニーは、仕事があるからと言い訳しますが、マックスは、それって普通は男のセリフだよね、などと答えます。そこで、ファニーは、自分がマックスと一夜を共にしたのは、用事がすんだらマックスはプロヴァンスを去り、後腐れがないからだ、と言うのです。マックスが、英国のノッティングヒルにシャネルのためにビストロを作ってもいいというようなことを言うのに対するファニーの切り返しから。
Fanny: How typical to assume that I live in Provence because I have no choice.
Max: This place just doesn’t suit my life.
Fanny: No, Max. It is your life that doesn’t suit this place.
訳
ファニー「私が、しょうがなくプロヴァンスにいるって思うなんていかにもあなたらしいわ」
マックス「ここは僕の生活には合わないんだ」
ファニー「そうじゃないわ。この場所に合っていないのはあなたの生活のほうなのよ」
【表現のポイント】
Point 1
ファニーのセリフの最初There is something you should know about me のThere be something 人should know about ….「~について人が知っておくべきことがある」というパターンは、すこし改まって相手にくぎを刺すような場合に有効な表現です。文法的にはsomethingは、you should knowの目的語だったものが先行詞として限定を受けています。いろんなバリエイションが考えられます。この後のI’m 形容詞.の形で畳みかけるように自分の性格を説明しますが、ここに出てきている形容詞はそういった意味で人の性格を示すのに便利ですね。choosy「好みのうるさい」suspicious「疑い深い」irrational「不合理な、理不尽な」have short temper「気が短い」jealous「嫉妬深い」slow to forgive「許すのが遅い、なかなか許さない」参考)「理解が遅い」slow to understand
例「この薬についてはあなたが知っておかなくてはならないことがある」
There is something you should know about this medicine.
「あの人って、気前はいいんだけど、ひどく疑り深いのよ」
He is generous, but extremely suspicious.
Point 2
How typical to assume…は、how typical it is of you to assume…の省略。もともとit be typical of人to V「人がVするのは典型的だ、ありがちだ、特徴的だ」の形にhowがtypicalについて文頭に持っていった感嘆を示す形です。suitは、必要なものを与えてくれるという意味で「合っている」Does this schedule suit you ?「君は、この日程でいいかな」といった具合です。最後のファニーのセリフは、いわゆる強調構文で、強調したいものを文頭において目立たせようとするが、それでも物足りなくってit beで指して示し、残った文の部分をthatで結ぶだけです。逆算するとファニーは、もとはyour life doesn’t suit this placeとまず考えyour lifeを強調したくて少し前に持って行きit beで指しIt is you life としそれを残りの部分とthatで結ぶとIt is your life that doesn’t suit this place. となるのです。
例「その建物は、その環境に合っていない」
The building doesn’t suit the environment.
「この環境に合っていないのはその建物のほうだ」
It is the building that doesn’t suit the environment. (強調構文)
【練習してみよう】
- 日本文:あの男については知っておいてほしいことがあるの。彼は、昔私の姉と付き合っていて、彼女をひどく傷つけたわ。疑り深くて、理不尽で、気も短い。最低の男よ。
英文:There is something you should know about the man. He used to date my sister and hurt her badly. He is suspicious, irrational and has short temper. He is a jerk.
(2)日本文:私について一つ知っておいてほしいことがあるの。私、今のところ誰とも本気になれないってこと。
英文:There is one thing I want you to know about me. I can’t get serious about anyone for now.
- 日本文:あなたらしいわ、まだ彼女のことを思ってい手この街に来るなんて。でも覚えておいてほしいことがあるわ。あなたの生活は、ここの街に合わない。。
英文:How typical of you to still have a feeling for her, and come here, but there is something you should remember. Your life doesn’t suit this town.
【応用してみよう】
日本文:私について知っておいてほしいことがあるの。私って、手のかかる女で、嫉妬深
て、気が短いの。でも本当は、心の平穏を求めているだけなのよ。
英文:There is something I want you to know about me. I am high-maintenance, very very jealous and have short temper. But the truth is I am just looking for my own peace of mind.
参考)
high-maintenance「手のかかる、わがままな」
【最後に】
全てをカジノのルーレットのように奪い取り、芸術も人間関係も一元的な金銭価値においてかろうじて評価し、その自己増殖的利益の極大化のみを実態とする金融資本主義の世界と、生き物の力を引き出し、その助けを借り、精妙な一種の生態系の中で生み出される発酵技術、ワインの世界。この対照的な構図の中で、ヘンリー叔父さんの意思がマックスの記憶の中で最後に蘇ります。ファニー・シャネルは、その命を吹き込むGoddessといったところでしょうか。
因みに、ロンドンの投資会社のトレイダーを辞めてプロヴァンスでファニーと過ごすことを選んだマックスが、ファニーのビストロに来て彼女にこう言います。
“I would like a lifetime spent with an irrational and suspicious goddess. And a bottle of wine that tastes like you and a glass that’s never empty.”
「僕は、疑り深くてわけもなく怒る女神との一生と君の味がするワイン、そして決して空にならないグラスが欲しいんだ」